第三回の今回は、桧原湖のスモールマウスの生態と傾向について簡単に解説していきたいと思います。
と、その前に・・・。
バスと呼び名がつく魚は全て「ブラックバス」とひと括りにされがち。
間違いではないのですが、世間一般にブラックバスと称されているものは「ノーザン・ラージマウスバス」(以下ラージマウス)を指すことが多く、名前の通り口が大きく、太く黒い側線が特徴。
対して、今回のテーマであり僕のホームレイク桧原湖に生息する「スモールマウスバス」(以下スモールマウス)は文字通り口が小さく、代名詞でもある虎柄の模様が大きな特徴。
余談ですが・・・、実はラージマウスよりも大きく成長する「フロリダバス」と呼ばれる個体も日本の一部地域(奈良県池原ダム等)に生息。世界記録(73.5cm/10.12kg)が釣られた滋賀県琵琶湖にもこのフロリダ系のDNAを引き継いだ個体が生息している。
もくじ
スモールマウスバスの歴史
アメリカ原産の「ラージマウス」は1925年に赤星氏の手により、食用またはスポーツフィッシングの対象魚目的として、芦ノ湖に日本で初めて移入されたのがはじまり。
対して「スモールマウス」は、アメリカの中でも寒い地域の北米原産の冷水を好む魚で、1990年はじめ頃に福島県桧原湖、長野県野尻湖で分布が確認されるようになった。
桧原湖、野尻湖ともに標高の高い山間部に位置し、水温も平地に比べて低い。また、餌となるワカサギやエビ等も豊富に生息し、冷水を好み食欲旺盛なスモールマウスには最高の環境。
この2つの湖は日本では唯一の認定湖であり、漁協ではバスを遊漁券(釣券)の対象魚とし、湖周辺の経済に潤いをもたらす生物として自治体からも認められている貴重なフィールドである。
スモールマウスバスの性格と魅力
真っ先に目がいくのは、先に述べたようにカッコイイ「虎柄」。
実はこの虎柄、常に出ているわけではなく、危険を感じたり捕食行動をとったりする興奮状態の際に現れるとされています。
目が赤い時は、興奮状態や産卵期(5~6月)のオスに多く見られる。
また、目が非常に良く俊敏で餌に対しての執着心が強い。
水深10mの底から一気に水面に急浮上して餌を襲うこともあり、スモールマウスはとにかくアグレッシブな魚。ところが、やる気スイッチのオン/オフが極端なツンデレ的な一面もしばし。
見た目の格好よさに加え、強烈なファイト(引き)に魅せられるアングラーは数知れず。
私も魅せられた一人であり、私のガイドを利用してくださるゲストの皆様も桧原湖のスモールマウスに魅了され、景観豊かな桧原湖へ興奮と感動を味わうために通い詰めるのです。
ストラクチャー(岩や木などの障害物や水生植物等)に寄り添ったり、身を潜め、餌を待ち伏せながら捕食する傾向が強いのがラージマウス。対して、スモールマウスはストラクチャーは大好きだが、ラージマウスほど寄り添ったり身を潜めたりはせずに、その近くの中層に群でサスペンドしたり、フラフラ泳いで過ごす。居心地の良さ(水温や酸素量)、餌が豊富にいる場所を求めてあちらこちらを縦横無尽に泳ぎ回り、回遊性が非常に高いのも特徴。
スモールマウスとラージマウスは、「バス」という魚類の括りでまとめられてしまいがちだが、行動パターンが似ている部分もありつつ、性格が異なる部分も多々。その違いに対し、考え方や釣り方を合わせていけるかどうかで釣果も大きく左右される。
桧原湖におけるスモールマウスの食性
スモールマウスはその置かれた環境によって餌の重要度を変化することが知られているが、桧原湖では主にワカサギ、スジエビ、そして昆虫類を捕食している。
その年によって傾向は変わるが、全体的な月を通してスジエビを食べている印象が強い。エビと同様にワカサギを捕食しつつ、夏以降は底生性魚類のヨシノボリも捕食。昆虫類では8月にアリなどの小さい陸生昆虫を多く捕食している個体も多い。以外にも、夏の風物詩的昆虫である、セミが水辺に落下しても桧原湖のスモールマウスが積極的に捕食するシーンを見かけることが少ない。
スモールマウスの食性で、アングラーを興奮させてくれるのがワカサギを主食としている時期。ワカサギの群れと共にスモールマウスも数匹、多い時で数十匹の群で追尾しながら行動し、捕食のタイミングを見計らって一斉に襲うなど、持久力と瞬発力を生かした追尾型と呼ばれる捕食本能も持つ。
9月以降から始まる表層ワカサギパターンは、海で言うナブラを連想させるような光景が頻繁に発生。ルアーめがけて突進してバイトしてきたり、トップウォータープラグで誘っていると、大間のマグロのように水面を激しく割りながらバイトしてきたりと丁度今のタイミングはスリリングな釣りも堪能できる。
※ラージマウスも湖によってはスモールマウスと同じような捕食行動をとります。
自身の経験を元に駆け足で解説させていただきましたが、桧原湖のスモールマウスは捕食する餌の種類も多く、様々な釣り方が存在する。スピニングタックルを用いた繊細な釣りや、本能的に持つ好奇心旺盛な性格を利用して、ビッグベイトやスピナーベイトなどの巻物、ラバージグ等を用いたパワーフィッシングでも私たちを楽しませてくれる非常にエキサイティングな遊び相手である。
次回は実際のシーズナルな詳しい釣り方等に入っていきましょう。